矯正治療だけでなくアゴ骨の外科手術も必要と診断された方、もしくは、自分でアゴ骨の手術が必要だろうと感じている方には、「外科矯正治療の流れ」について知って頂きたいと思います。
矯正治療を行う際、通常のブラケットやワイヤーを用いて行う治療に加え、全身麻酔での外科手術を同時に行う必要があるものを、「外科矯正治療」といいます。
外科矯正治療について、いろいろ情報を知りたくても、周りに治療を受けてた経験がある方はそんなにいらっしゃらないはずです。そのため、外科矯正治療を不安に思っている方も、少なくないはずです。
ここでは、外科矯正治療についての一連の流れについて説明します。
外科矯正治療の流れ
検査・診断
まず、最初に行うのが「検査」および「診断」です。
適切な治療計画をたてるために、口、顔、レントゲン写真の撮影、および歯の型どりを行います。その他、外科矯正治療の診断を行うためには、顎運動の記録が必要になります。
これらの検査結果をもとにたてた治療計画について、後日、担当医と相談します。たとえば、抜歯をするのか、外科手術はいつ頃になるのか、手術を行うのは下アゴだけなのか、それとも上下なのか、どんなリスクがあるのかなどです。
手術前の矯正治療(または、術前矯正)
外科矯正治療開始が決まったら、ブラケットやワイヤーなどの器具を歯につけて、実際に矯正治療がはじまります。まずは、歯のデコボコをとったり、歯のねじれをとったりして、手術可能な状態にするのが目的です。
また、歯の抜歯を行って前歯の傾きを修正したり、不要な親知らずの抜いたりするのもこの時期です。手術可能な状態になるまで、およそ1〜1.5年の治療期間が必要です。
外科手術
手術前の矯正治療が完了したら、次は外科手術を行います。
手術直前の噛み合わせが、治療を受ける患者さんにとって、最も最悪な状態です。なぜなら、上下の噛み合わせのことは無視し、上下の歯をそれぞれのアゴ骨に理想的に並べた状態だからです。そのため、手術直前の時点では、上下の歯が全く噛み合わない格好になっているのです。
そして、外科手術では、その上下の噛み合わせがしっかり噛むように、アゴ骨の位置を修正するのです。そのため、手術直後の噛み合わせは、上下がしっかりと噛み合った状態になっているのです。
また、手術後には、入院が必要です。手術後すぐでも、日常生活を普通に行うことは可能です。しかし、顔がひどく腫れた状態が1週間ほど続くため、10〜14日の入院期間を設定するのが一般的です。
入院期間については、医療機関によって多少ことなるので、個々に確認するようにしてください。
手術後の矯正治療(または、術後矯正)
外科手術後にも、矯正治療が必要です。
上下の歯が、緊密にかみ合うようにするための、仕上げの段階です。下の矯正装置から上の装置に向かって、小さな輪ゴム(または、顎間ゴム)をかけたり、ワイヤーを調整したりしながら、上下の歯がしっかり噛むようにするのです。
手術後に矯正治療を行う期間は、およそ半年〜1年です。この間行うゴム掛けの作業が、矯正治療後の歯並びや噛み合わせが安定するうえで非常に大切です。
そして、ゴム掛けを行うのは、患者さん自身です。このゴム掛けの作業が、矯正治療の成否を決定するといっても、言い過ぎではありません。そのため、しっかりと装着することが非常に重要なのです。
後戻り防止のための保定
矯正治療が終了し、装置を外した後には、マウスピースを使用します。
これは、「リテーナー」または「保定装置(ほていそうち)」と呼ばれるものです。毎日使用することで、矯正治療で整えた歯並びや噛み合わせが崩れることを防ぐものです。
その後は、治療中のように毎月に歯科医院を訪れる必要はありません。ただし、年に1〜2回の間隔でのチェックが必要です。
リテーナーの使用期間は、骨の中で歯が安定するまでの期間、おおよそ2年が目安となります。
まとめ
外科矯正治療は、比較的安全な治療方法です。ただし、外科矯正治療を受けた人が周りにいないため、経験談を聴くことができません。
そのため、外科矯正治療に対する不安が解消できない人も少なくないと思います。
そのため、外科矯正治療が必要になった方は、外科矯正治療の治療実績がある歯科医院であることを確認したうえで、主治医と話を重ねるようにしてください。