矯正治療で得られるのは、歯並びや噛み合わせの改善だけではありません。場合によっては、矯正治療を行うことによって、副次的に、他の効果を得られるケースがあるのです。
たとえば、鼻腔(びくう)の拡大です。鼻腔については、大辞林では以下のように説明してあります。
つまり、鼻腔とは、鼻呼吸する際に関係する空気の通路になる部分のことなのです。それでは、お子さんの鼻腔を積極的に大きくなることで、どのようなメリットが得られるのでしょうか?
ここでは、矯正治療によって、子どもの鼻腔を広げることで得られるメリットについて説明します。
鼻腔が狭い子の特徴
上アゴが狭く、普段、口がポカンと開いていることが多いお子さんの中には、鼻腔が狭く、鼻で呼吸することが苦手なタイプが多く認められます。
しかし、矯正治療本来の目的ではありませんが、矯正治療で上アゴを大きく拡大することによって、鼻呼吸を容易にことができるのです。
なぜなら、上アゴを拡大することによって、鼻腔を広げることができるからです。そして、鼻腔が広がることによって、空気の通り道が大きくなり、呼吸がスムーズになるからです。
そして、口呼吸ではなく、鼻呼吸の習慣を得ることによって、いくつかのメリットを得ることができるようになるのです。
鼻呼吸のメリット
感染症から予防できる
口呼吸だと、インフルエンザなどの感染症にかかりやすいことが分かっています。なぜなら、口呼吸の状態だと、肺の中に細菌やウィルスが直接入ってくる格好になるからです。その結果、感染症にかかりやすくなってしまうのです。
感染症予防のためには、マスクを用いて、細菌が身体に侵入してくることを防いだり、加湿器を用いて、ウィルスの感染力を弱めたりすることが効果的です。
このような、細菌やウィルスに対するフィルター効果および加湿効果は、口呼吸ではなく、鼻呼吸によっても得ることができます。
なぜなら、鼻腔にも、フィルター機能や加湿機能が備わっているからです。そのため、鼻呼吸の習慣を得ることで、積極的に感染症から身を守ることができるようになるのです。
身体に十分な酸素を取りこむことができる
口呼吸だと、身体の中に取り込む酸素が不足する心配があります。なぜなら、口呼吸の状態だと、肺の中に乾燥した空気が直接入ってくる格好になるからです。その結果、肺には炎症が発生し、身体に酸素を取り込むという機能を十分に果たすことができなくなってしまうのです。
血液中の酸素が不足すると、身体の成長や健康にも悪影響が及ぶことが心配されます。また、普段から疲れやすい、頭がぼーっとするなどがある場合、もしかすると、酸素不足が原因なのかもしれません。
しかし、口呼吸ではなく、鼻呼吸の習慣を得ることで、血液中に酸素が不足することを防ぐことができます。なぜなら、鼻腔が加湿器の役割を果たすからです。そのため、肺に炎症が発生したり、血液中の酸素濃度が低下したりする心配がないのです。
歯並びを維持できる
口呼吸だと、歯並びや噛み合わせが悪くなる心配があります。なぜなら、口呼吸の状態だと、口が常に開いた格好になるからです。その結果、口唇や噛むチカラがうまく作用せず、歯並びや噛み合わせが乱れやすくなるのです。
しかし、鼻呼吸の習慣を得ることで、常に口を閉じた格好でいることができるようになります。そのため、歯並びや噛み合わせが悪化することを予防したり、矯正治療でキレイに整えた歯並びや噛み合わせを、長期的に維持したりすることができるようになるのです。
鼻腔を広げることができる矯正装置
上アゴを広げる際、積極的に鼻腔を拡大するためには、「上顎急速拡大装置」が有効です。上顎急速拡大装置とは、他の拡大装置と比べて、短期間で上アゴを広げることができる特殊な矯正装置です。
速いペースで拡大することで、緩やかなペースで拡大した場合とは、異なる反応をえることができるのです。
たとえば、緩やかなペースで上アゴを拡大した場合、主に歯が外側に移動することによって、上アゴが広がります。そのため、鼻腔に対しては、ほとんど影響を与えないのです。
一方、急速拡大装置を用いると、鼻腔を効果的に拡大することができます。なぜなら、速いペースで上アゴを拡大すると、上アゴの骨が中央で2つに割れた格好で広がるからです。
そのため、急速拡大装置を用いて上アゴを広げた際には、鼻腔も同時に広げることができるのです。
まとめ
矯正治療においては、鼻呼吸についても十分に考慮し、治療計画を立てることが常識です。なぜなら、口呼吸だと、感染症にかかりやすかったり、血液中の酸素濃度が不足したりするだけでなく、歯並びや噛み合わせを長期的に維持することが困難だからです。
そのため、矯正治療を考えている方は、鼻や喉(のど)の状態についても適切に診断できる歯科医院を選択することが非常に大切です。そして、場合によっては、耳鼻咽喉科と連携をとりながら治療計画を立てたり、治療を行ったりすることが大切になるのです。