歯にブラケットなどの矯正装置をつけはじめると、控(ひか)えてほしい食べ物があります。たとえば、ガムやキャラメルなど「粘着性の強い食べ物」です。
なぜなら、粘着性のある食べ物は、ブラケット装置やワイヤーにからみつき、通常の歯磨きを行っても取り除くことが困難だからです。そのため、ムシ歯の発生原因となったり、矯正装置を壊したりすることがあるからです。
しかし、粘着性の強い食べ物以外にも、歯列矯正中の患者さんにとって、アウトとなる食べ物があることを御存知でしょうか?
それは、カレーライスなど、矯正装置を着色する食べ物です。
しかし、このような装着中の装置を汚くしてしまうのは、私たちにとって非常に身近な食べ物ばかりです。
そのため、「どのような食べ物に注意すべきか」、また「どのような対処法があるのか」について、事前によく知っておく必要があるのです。
カレーは歯列矯正の天敵
カレーを食べると歯が染まる
カレーを食べると、口の中全体が黄色に染まってしまいます。なぜなら、カレーに含まれるターメリックが、強烈な着色パワーをもっているからです。
では、このとき歯に付けている矯正装置が、変色してしまっているのでしょうか? それとも、単に、歯の表面が着色しているだけなのでしょうか?
実は、そのどちらでもありません。カレーによって着色するのは、ワイヤーをブラケットに固定するためのゴム、つまりクリップ(または、モジュール)と呼ばれる小さな輪ゴムが変色したからなのです。
カレーの着色は、絶対に落ちない!
カレーを食べて変色したゴムは、元通りにすることができるでしょうか?
残念ながら、変色したゴムを、自分でキレイにすることはできません。なぜなら、食べ物の色素成分がゴムの中に染みこんで、ゴムそのものの色がすでに変色してしまっているからです。
そのため、一生懸命に歯磨きしても、必死にうがいを行ったとしても、ゴムに染みこんだ色素を取り除くことは不可能なのです。
歯医者さんで復活する!
変色したゴムは、ずっとそのままではありません。なぜなら、歯列矯正の調整をおこなう際、歯のクリーニングを行ったり、ゴムの交換を行ったりするからです。
そのため、歯列矯正の調整後には、変色したゴムも元通りのキレイな状態になり、憂鬱(ゆううつ)な気分もスッキリするはずです。
カレー以外の危険な食べ物は、これだ!
- <歯列矯正の際、着色が心配される食べ物>
- ターメリック系・・・カレーライス、カレーうどん、スープカレー、ターメリックライス、タンドリーチキンなど
- サフラン系・・・パエリア、サフランライス、ブイヤベースなど
- デミグラス系・・・ハヤシライス、ハンバーグ、ハッシュドビーフ、グラタン、オムレツ、ドリアなど
- 唐辛子系・・・キムチ、コチュジャン、チゲ鍋など
- トマト系・・・ミートソース、パスタ、ケチャップ、オムライス、ハンバーグ、ドリアなど
- 飲み物系・・・コーヒー、紅茶、ほうじ茶など
- 嗜好品系・・・赤ワイン、タバコなど
- その他・・・イカスミ、ウィスターソース、うがい薬(イソジン、クロルヘキシジン)など
歯列矯正中の着色対策について
着色する食べ物を避ける
着色対策として最初に考えられるのが、「着色する食べ物は、基本的に食べない」ことです。そうする事によって、ゴムが着色する原因を、根本から防ぐことができます。
ただし、明らかに着色しやすい食べ物について、ある程度おぼえておく必要があります。そうすることで、普段の食事の際、明らかに着色する食べ物を避けることができるようになります。
着色する食べ物を直前に食べる
「好きな食べ物を、まったく食べない」というのは、普通の人になかなかできるものではありません。そのため、次に紹介するのは、「着色する食べ物は、矯正の調整を行う直前に食べる」という方法です。
これなら、たとえゴムがひどく着色しても、直ぐに交換するチャンスがあるからです。
よって、この方法は、着色を防ぐという種類の対策ではありません。そうではなく、「着色してもかわまないタイミングで、好きな食べ物を好きなだけ、食べてください」というものです。
クリップの色を変更する
用いるゴムを、透明なものから色付きのゴム(または、カラークリップ)に交換することで、着色の問題を改善することが可能です。なぜなら、カラークリップにすることで、着色した色素を目立たなくすることができるからです。
たとえば、白や歯と同色のゴムです。金属のブラケットを使用している場合は、銀色のクリップを用いても良いかもしれません。口の中の雰囲気はすこし変わりますが、一度ためしてみることをオススメします。
まとめ
矯正治療中に、装置が汚くなると、気分も大きく落ち込んでしまいます。場合によっては、矯正治療を続けるモチベーションさえなくなってしまうこともあるのです。そのため、矯正治療中は、着色しやすい食べ物については、十分に配慮する必要があります。
よって、もともと歯が着色しやすかったり、治療中の着色が心配だったりする方は、事前に主治医とよく相談することが大切です。
そして、ブラケットのタイプについて相談したり、カラークリップを用いたりして、着色が目立たなくする対策をとるようにしてください。