矯正治療を行う際、抜歯が必要になる場合があります。
たとえば、歯のデコボコが強くすべての歯を並べることができなかったり、前歯を積極的に引っ込めたりする必要がある場合です。
ただし、その抜歯が嫌で、矯正治療に踏み切れない患者さんもいるようです。抜歯ときいて、どうしても心配になってしまうからです。
ただし、そこには、大きな勘違いがあります。矯正治療で行う抜歯は、悪い歯の抜歯や親知らずの抜歯とはまったく違うからです。
そのため、矯正で行う抜歯は、痛んだり、出血したりする心配がないのです。ここでは、矯正治療で行う抜歯が痛たくない理由について説明していきます。
麻酔の痛みについて
みんなが、抜歯の際に最も心配するのが、「麻酔の痛み」です。
歯科治療における麻酔が痛いのは、多くの場合、痛みや腫れがある部分に麻酔液を入れようとしているからなのです。
痛みや腫れがある部分は、中の圧力が非常に高い状態になっています。そのため、その部分に麻酔薬を追加すると、中の圧力をいっそう高めることになってしまうからです。
これは、パンパンにふくれた風船に、さらに空気や水を入れて大きくしようとしているのと同じことだからです。
しかし、矯正治療で抜歯する歯は、健康な歯です。そのため、歯の周りに痛みや腫れがあることはありません。
そのため、通常の歯科治療で行う麻酔と違って、矯正治療で行う麻酔は痛みが少ないということができます。
抜歯の痛みについて
次に、みんなが心配するのが、「歯を抜く痛み」です。
抜歯の際、「麻酔がしっかり効いてくれるかどうか」が誰にとっても気がかりなのです。
歯科治療において、麻酔が効かなくなる最大の原因は、「炎症(えんしょう)」です。炎症があると、周囲は酸性の状態になってしまうからです。
酸性の部分には、多くの水素イオンが存在します。そして、その水素イオンが、麻酔薬の本来の働きを邪魔してしまうのです。
しかし、矯正治療で抜歯する歯は、健康な歯です。当然、その歯の周囲に炎症があることもありません。そのため、矯正治療で行う抜歯では、麻酔が効きやすく抜歯の痛みも少ないということができるでしょう。
抜歯後の痛みについて
最後は、「歯を抜いた後の痛み」についてです。
歯を抜いた後に起こる痛みの原因は、「細菌感染(さいきんかんせん)」によるものがほとんどです。抜歯によって細菌を刺激することで、ひどく腫れたり、痛んだりするトラブルが発生するのです。
また、細菌感染があると、抜歯後の傷口が化膿(かのう)して、傷の治りが極端に遅くなることも1つの原因です。
しかし、矯正治療で抜歯する歯は、健康な歯です。当然、歯の周りに深刻な細菌感染があることはありません。
そのため、矯正治療で抜歯を行っても、大きく腫れたり、大きな痛みが発生したりすることはないのです。
まとめ
矯正治療における抜歯は、歯を悪くしてからの抜歯や、親知らずの抜歯とは明らかに異なります。
歯を抜く際も、抜いた後も、痛みは通常の歯科治療と比べてはるかに少ないのです。
もし、抜歯が不安という理由だけで、あなたが矯正治療をためらっているのだとしたら、それは非常にもったいないことです。
よって、抜歯について不安を感じている方は、患者さんのペースで治療を行う歯科医院、もしくは患者さんとの相談の時間をしっかりとってくれる歯科医院を選択することが大切です。
そして、そのような自分にあった歯科医院を見つけたうえで、矯正治療をもう一度考えてみてはいかがでしょうか?