矯正治療では、歯の両サイドを削ることを頻繁に行います。
歯の間に、円盤状もしくはリボン状のヤスリを使って歯を細くすることを、「ディスキング」、または「ストリッピング」といいます。
しかし、たとえわずかな量であっても、歯を削られる側にとっては不安を感じて当然です。
「何のために、歯を削る必要があるのか」、「歯を削ることで、どのような効果があるのか」を十分に理解する必要があります。
ここでは、矯正治療中にディスキングを行う目的と、その効果について説明します。
矯正治療でディスキングを行う目的
歯の大きさを修正する
ディスキングを行う目的として、最初に挙げられるのが「幅の修正」です。
上下の歯がキレイにしっかりと噛み合うためには、上下の歯の大きさが釣り合う必要があります。このことは、歯車(または、ギア)をイメージすると分かりやすいです。たとえば、歯車の片方に巨大な歯、もしくは過度に小さい歯があったとします。
その場合、この歯車は、普通に動くことができるでしょうか?当然、その2つの歯車はうまく噛み合わず、キチンと動くことはできないはずです。
歯の噛み合わせについても、同様のことが言えます。つまり、歯並びの中に大きい歯や小さい歯が含まれていると、上下の歯が厳密に噛み合うことができないということです。
そして、この歯の大きさを整える際の手段として、有効なのがディスキングです。大きい方の歯にディスキングを行うことで、歯の形態を小さくし、上下の大きさのバランスを整えるのです。
このように、歯の大きさに問題があるケースでは、ディスキングを行うことで、上下の歯をしっかりと噛み合うようにすることができるのです。
前歯のすき間を改善する
次に挙げられるのが、「すき間の改善」です。
前歯の形態には、「長方形」「三角形」「樽型(たるがた)」などの形態があり、比較的個性が現れやすい歯です。
たとえば、前歯の形態が三角形や樽型だと、歯と歯の間に大きな三角形のすき間ができてしまいます。このすき間は、周囲の人には黒い三角形に見えることから、「ブラックトライアングル」と呼ばれています。
このブラックトライアングルは、前歯で非常に目立つことから、できれば改善したいものです。その際、ディスキングが効果的なのです。
つまり、前歯の両サイドを削って、形態を三角形や樽型から長方形に似せていくのです。そうすることで、ブラックトライアングルを小さくすることができるのです。
もちろん、前歯を削ることができる量にも限度があるので、ディスキングだけで完全に解決できるとは限りません。
しかし、ブラックトライアングルを改善する手段として非常に有効です。
歯を並べるすき間をつくる
ディスキングを行う目的として、最後に紹介するのが、「スペースの獲得」についてです。
たとえば、歯のデコボコや捻(ねじ)れが強くある場合です。デコボコや捻れをほどくためには、歯を並べるためのスペースが必要になります。
その際、ディスキングは非常に有効なのです。インビザライン®に代表されるマウスピースを使って行う矯正でも、歯を並べるためのスペースを得るために、このディスキングを多用します。
ディスキングを行うことで、必要な場所に、しかも効率的にスペースを作り出すことができるのです。
ただし、ディスキングで歯を削ることができる量には、限度があります。しかし、矯正治療でスペースを作る際に、ディスキングは非常に有効な手段といえるでしょう。
まとめ
ディスキングまたはストリッピングは、矯正治療において不可欠の処置です。上下の歯がしっかりと噛み合うよう調整する際、歯を並べるためのスペースをつくる際などに、非常に有効となります。
そのため、これから矯正治療を考えている方は、ディスキングを適切に診療に取り入れている歯科医院を選択することが大切です。
そして、そのような安心して治療を受けることができる歯科院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにしてください。