矯正治療が進んでくると、「ゴム掛(か)け」、または「顎間(がっかん)ゴム」と呼ばれる治療が始まります。
ゴム掛けとは、下アゴの装置から、上の装置に向かって矯正用の輪ゴムを自分でかける行為のことです。
このゴム掛けの期間は、矯正治療の中でも非常に重要なステージです。なぜなら、ゴム掛けが不十分な場合、治療がまったく進行しないだけではなく、噛み合わせが、むしろ悪くしてしまう可能性が高いからです。
ここでは、ゴムかけにつまずく理由と、その対策について説明します。
矯正治療における「ゴム掛け」とは
「ゴムかけ」または「顎間ゴム(がっかんごむ)」とは、下アゴから上アゴに向かって、様々な格好で小さな輪ゴムをかけることです。
このゴムかけは、前歯の角度を修正したり、上下の歯をしっかり噛み合わせたりするために、歯列矯正では必ず必要になるものです。
そのため、このゴムかけを用いず、歯列矯正で「キレイな歯並び」と「しっかりとした噛み合わせ」をつくることはできないのです。
ゴムかけをサボった結果・・・
ゴムかけの痛みがいつまでも続く
ゴムかけが十分にできていないと、ゴムかけの際の痛みは、いつまでも続くことになります。なぜなら、いつまでもゴムのチカラに慣れることができないからです。
そのため、いつまでも痛みに悩まされることになり、ゴムかけ自体がおっくうになってしまうのです。
治療期間が、無駄にのびる
ゴムかけができないと、当然、治療期間が長くなってしまいます。なぜなら、ゴム掛けができてない間、矯正治療がまったく進展しないからです。
そのため、ゴムかけを「一定期間」「しっかり」と行わないかぎり、矯正治療が終了することはできないのです。
状態が悪化することもある
ゴムかけができないと、現状の噛み合わせが大きく悪化することがあります。なぜなら、ワイヤーに加えた曲げのチカラは、ゴムかけをしている状態で正しく作用するように調整してあるからです。
そのため、ゴムかけが不十分な場合、歯には異常な向きのチカラが加わることになってしまうのです。
ゴムかけが、しっかりできたケース
歯と歯の間に隙間(すきま)があり、しっかりと噛み合っていないことがわかる。
下あごを前方に引っ張る格好になるように、ゴムかけを行っています。
およそ4ヶ月間、ゴムかけを行った結果、上下の歯がしっかりと噛み合ってきました。
ゴムかけが継続できた先輩たちの工夫
ゴムを置く場所を工夫する
ゴムかけを家庭で継続してできるようにするためには、「ゴムを置く場所」について工夫することです。たとえば、ゴムの袋を歯ブラシと同じ場所や、枕の上に置いておくことです。
そうすることで、ゴムのつけ忘れを予防したり、「めんどうくさい」という感情に打ち勝ったりすることができやすくなります。
複数の場所に用意しておく
学校や職場でもゴムかけを継続して行うためには、カバン・ペンケース・歯磨きセット、財布の中など、小分けにして持ち歩くことが有効です。
なぜなら、小分けすることで、「ゴムを家に忘れてつけられない」というトラブルを予防することができます。また、その小分けしたものを、よく使用する道具と一緒にしまうことで、目に触れやすくすることができるからです。
新しいゴムに交換する
いつも新しいゴムを使用することで、ゴムかけを継続できやすくなります。なぜなら、新しいゴムのほうが、やはり気持ちがいいからです。
また、新しいゴムであれば、食事中も食卓の見える位置に、あらかじめゴムを準備しておくことができるからです。
ゴムかけの期間を、できるだけ短くする方法
インプラントアンカーを用いる
ミニインプラント(または、インプラントアンカー)を用いることで、ゴムかけの期間を短くすることができます。なぜなら、ゴムかけと同時に、ミニインプラントから歯を引っ張ることができるからです。
たとえば、出っ歯を治療するときには、上あご全体の歯を後方に、ミニインプラントで引っ張ります。そうすることで、ゴムかけの一部をミニインプラントですませることができるのです。
生活習慣を振り返る
生活習慣をふり返ることで、ゴムかけの効果をよくすることができます。なぜなら、あなたの生活習慣が、ゴムかけの効果を邪魔している可能性があるからです。
たとえば、「頬杖(ほおづえ)」です。普段の生活を思い出してみると、頰杖をついた格好でテレビを見たり、寝転んだりしていることが意外に多いはずです。その頰杖の習慣が、ゴムかけの効果を邪魔していることが少なくないのです。
そのほか、寝るときの姿勢や、片方だけで食べ物を噛む癖(くせ)、食いしばりや歯ぎしりの癖が影響しているケースもあるので、生活習慣について見直してみることもオススメです。
ゴムかけでの禁止事項
ゴムかけができない方の中に、、ゴムを二重にかけたり、ゴムの強さを強くしたりすることによって、ゴムかけの効果を短期間で得ようとする方がいます。
しかし、このような勝手な行為は、決して行ってはいけません。なぜなら、ゴムの強さが強すぎると、歯はむしろ動きにくくなるからです。
そのため、このように一発逆転をねらったりせず、ゴムかけをキチンと行うことが、矯正治療をスムーズに終わらせる最良の方法なのです。
まとめ
矯正治療におけるゴム掛けは、非常に重要なステージです。
ゴム掛けをサボると、治療期間がダラダラと延びるだけではありません。噛み合わせの状態が、現状より悪化しててしまうことがあるからです。
よって、ゴム掛けがはじまった際は、主治医の指示にしっかりと従って、適切に行うようにしてください。その際、矯正治療を無事終えた先輩たちの工夫は、きっと参考になると思います。