上顎の天井の部分のことを、「口蓋」といいます。
乳歯が生え始める時期には、「V字形の口蓋」「幅が狭い口蓋」「天井が高い口蓋」など、すでにさまざまな問題がみられます。
これらの特徴が見られるお子さんでは、将来歯並びや噛み合わせ異常が起こりやすく、噛む、飲み込む、話す、呼吸するなどの基本的な機能にも異常がある心配があります。
つまり、すでに上顎の形に異常があるお子さんは、将来の「歯並び異常」もしくは「噛み合わせ異常」の予備軍なのです。
しかも、このタイプの異常は、舌や口唇の機能が関係しているため、問題が根深く問題解決が困難である可能性が高いのです。
ここでは、上顎の形に影響を与える原因と、上顎の形について説明します。
上顎の理想的な形
お子さんの上顎の理想的な形は、「U字型」です。
さらに、横幅があって、底が浅いキレイなU字型だと、将来キレイな歯並び、良い噛み合わせになりやすいです。
ただし、最近では、キレイなU字型の上顎をもつお子さんの割合が、非常に少なくなってきているのです。
つまり、大きくお子さんの上顎は、横幅が狭く、V字型だったり、ひしゃげた形をしていたりするのです。
なぜ、このようにお子さんの上顎の形が変化したり、将来の歯並びや噛み合わせに影響したりすることがあるのでしょうか?
上顎の形に影響を与えるもの
上顎は、「舌」や「口唇」など口の周りの筋肉の影響を受けて成長します。
つまり、きれいなU字型の上顎をもつお子さんでは、舌や口唇が十分に機能しているということができます。
一方、幅が狭く、底が深い上顎をもつお子さんでは、舌や口唇などの口の周りの筋肉が十分に機能していないのです。
舌の動きが大切な理由
わたしたちは物を飲み込む際、上顎の天井部分(または、口蓋)に舌を強く押し当てて飲み込みます。
この時の舌のチカラは400g/cm2と非常に強く、しかも1日400~600回に及びます。これは、矯正治療で歯に加えるチカラよりも、さらに大きなチカラであるといえます。
この日常的な舌の動きが、上顎を刺激し、その後の成長にも大きな影響を与えるのです。
つまり、舌が上顎を押し広げることで、上顎は横幅が広く底が浅いキレイなU字型を呈するようになります。
逆に、舌の正常な動きができていないお子さんでは、横幅が狭く底が深い状態の上顎になるのです。
口唇の動きが大切な理由
唇の動きも、上顎の形を決定する大切な要因です。
口唇の筋肉は、会話するとき、食事で食べ物を口に取り込もうとする際、主に活発に働きます。そして、このような口唇の活動が、上顎を刺激し、その後の成長を促進するのです。
口唇の筋肉が機能するのは、会話や食事のときだけではありません。口をしっかり閉じている状態でいるだけでも、口唇の筋肉は活動しているのです。
そのため、口をぽかんと開けていることが多いお子さんでは、口唇の筋肉が弱くなりがちです。そして、口唇の筋肉の活動が少ないことで、上顎の刺激が不足し、幅が狭いV字型の上顎になりやすいです。
まとめ
幼児期もしくは乳幼児期から、舌の動き、口の筋肉の動き、呼吸などよく観察することが重要です。
なぜなら、舌や口唇の機能が、歯並びや噛み合わせに影響することが分かっているからです。
そして、舌や口唇の機能が不十分であることが原因で発生した歯並びや噛み合わせの異常は、問題が根深く、解決が難しいケースが多いことが分かっているからです。
よって、お子さんをお持ちの方は、こどもの口の機能について適切なアドバイスが受けられる歯科医院を選択することが大切です。
そして、そのような子どもの歯列育成に熱心に取り組む歯科医院を見つけたうえで、定期的にチェックを受けることをオススメします。