矯正装置を付けると、虫歯のリスクがあがります。これは、残念ながら事実です。口の中に沢山の装置がはいって、清掃しにくくなったことも原因です。さらに矯正治療中は、別の要因が重なってさらに虫歯の危険度が高まっているのです。口の中を健康に保つためには、今まで以上に注意が必要になります。
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ここでは、あなたが歯列矯正中に行うべき、虫歯予防のポイントについて紹介しています。矯正治療中に虫歯を作らないように、必ず役立ててください。
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歯の表面に矯正装置がつくと、一気に歯磨きが難しくなります。今まで行ってきた歯磨きより、時間と手間をしっかりとかける必要があります。何日も同じ部位に磨き残しがあると虫歯にもなりますが、歯垢自体がさらに落としにくい汚れになってきます。ちょうど台所の流しの汚れが落ちにくくなるように、時間とともに汚れが強固に付くようになってしまいます。
矯正装置を付けてしばらくは、硬いモノを噛むことができません。そのため今まで食べてきたモノより、柔らかめの食事をとる傾向にあります。実はこの事も、虫歯のリスクを高める要因になってしまいます。柔らかめの食べ物は歯や装置に粘着するので、歯ブラシで簡単に落ちにくい事があげられます。また噛み応えのある食べ物では、自然と歯垢を落とす役割があります。しかし柔らかい食べ物では、その自浄作用はうまく働くことができません。
唾液は口の中の酸を中和したり、溶けた歯の表面を再石灰化する役割があります。虫歯予防にとって、唾液働きは必要不可欠なのです。唾液の分泌は主に、噛むことでかき立てられます。しかし矯正治療中は、しっかり強く噛むことができないことができません。そのため唾液の量が不足しがちになってしまうのです。
むし歯のリスクと、飲食回数には密接な関係があります。歯列矯正を行う時期には、この飲食回数が増加する傾向があります。例えば習い事や塾、さらには部活動の開始です。休憩時間に間食を繰り返したり、夕食を二度に分けたりします。成長期に常に空腹感があること、勉強しながらの飲食も関係があると思います。歯列矯正を行う時期と、飲食回数が増加する時期が一致するため、虫歯のリスクはひどく増加しやすいのです。
虫歯菌にも、実は善玉菌と悪玉菌とがあります。善玉菌は、歯の表面にくっつきにくい菌です。悪玉菌は、粘着性があって強い酸を放出します。悪玉菌が多い状態では、乳酸菌の割合が多く口の中から甘い臭いがしてきます。悪玉菌が増える原因にはいくつかの要因が挙げられます。矯正装置がたくさんあって、歯垢が残りやすいこと。磨き残しで、何日も古い歯垢が残っていること。飲食回数の増えること、砂糖を多く含んだ食べ物を食べる頻度が関係してきます。一旦、悪玉菌が定着すると、生活習慣を改善しても半年間は改善されません。その間ずっと、虫歯が進行しつづけることになります。とにかく、虫歯のリスクを最初の段階から悪化させないことが大切なのです。
定期的な歯科医院での清掃は、必ず必要です。それは、どんなに気をつけても、矯正治療の入っている状態では、完全に歯磨きすることは不可能だからです。そのため古く残った歯垢を壊し、悪玉菌が定着しない環境を定期的に作って上げる必要があります。その時にさらに虫歯予防のクスリも定期的に塗ってあげることで、虫歯予防の精度をあげることができます。
歯列矯正中の歯磨きは、一旦何もつけずに磨くことがオススメです。歯磨き剤を使用しながらだと、磨き残しが多くなりがちです。しっかり時間をかけて磨いたり、磨き残しを確認したりできなくなるからです。頻繁にうがいを繰り返しながら、丁寧に磨いていくことが大切です。
口の歯垢をキレイにとった後は、フッ素化合物でしっかりと予防することが大切です。一番は、歯科医院で購入できるフッ素洗口剤で、しっかりうがいすることです。手に入りづらい場合には、市販のフッ素化合物配合の歯磨き剤でも応用可能です。
キレイに歯垢をとった後、歯ブラシで歯磨剤を口の中全体に塗っていきます。最後一口もしくは二口だけ水を口に含んで、30秒ほど口の中でクチュクチュします。それ以上のうがいは、厳禁です。口の中に歯磨き剤の味がしっかり残った状態がよい状態です。
『飲食回数は1日5回まで』が原則です。この5回には通常の食事と、喉が渇いた際の飲み物も含まれます。ただし虫歯菌に影響しないお茶、お水、コービー(ブラックに限る)などは回数にははいりません。一度に沢山食べてもかまいませんが、ひどく時間をかけたり複数回に分けたりすると良くないです。例えばアメなど比較的長い時間口の中にとどまる食べ物は、最悪の食べ物と言えます。
虫歯の危険度が高くなった状態では、悪玉菌が多い状態になっています。多少注意して歯磨きしても、歯垢が簡単に落ちていない可能性が高いです。その為、毎回歯垢を染め出して、磨き残しがない状態をつくる必要があります。染め出し液については、歯科医院や一部ドラッグストアでも購入出来ます。錠剤タイプもありますが、断然液体タイプがオススメです。液体タイプを、綿棒など使って使用してください。
虫歯の危険度が高まった状態では、積極的にガムを噛んでもらいます。ガムに配合されたキシリトールで、悪玉菌から善玉菌への交換をうながすためです。また唾液を多く分泌するためにも、積極的にガムを噛むようにします。ただし市販のガムでは矯正装置にひどく絡んでしまうので、歯科医院で購入できるキシリトールガム®やリカルデントガム®に限ります。
虫歯の危険度が非常に高い場合、歯科医院で悪玉菌を除菌することが可能です。矯正装置の上からマウスピースをつくって、その中に除菌の為の薬剤を入れて数分おくだけです。何度か繰り返す必要がありますが、悪玉菌を減らすための有効な手段です。これについては、かかりつけの医院に相談されてください。
矯正治療の治療期間は通常2〜2.5年間です。「せっかく歯並びをキレイにしたのに・・・・・・・」とならないために、その間、定期的な歯科医院でのケアとご家庭でのしっかりとしたケアがともに必要になります。