「就職(しゅうしょく)」は、人生にとって重大なイベントです。同時に、社会人としての新たな生活がはじまり、急激に忙しくなるなど、生活環境が大きく変化するタイミングでもあります。
そのため、大学生が矯正治療を開始する際には、就職の予定もしくは大学卒業の時期を考慮して、矯正治療を開始する時期や、矯正治療の方法について決定する必要があります。
なぜなら、就職によって県外に引っ越しが必要になる可能性があるからです。そして、矯正治療を完了するためには、一般的に2年以上の治療期間が必要だからです。
そのため、これから矯正治療を考えている大学生は、今後の進路や就職の時期についても十分考慮し、矯正治療を開始する時期や、矯正治療の方法について決定する必要があるのです。
就職による影響
就職する際、他県への移動が必要になる方が少なくありません。このように他県へ就職することが決まったとき、矯正治療が完了していない状態だと、少し困ったことが起きてしまいます。
たとえば、大学卒業後に地元の企業に就職したり、地元で公務員になったりするケースです。 このとき、矯正治療が完了していな状態であれば、就職したあとも現在の歯科医院まで、月に1回の割合で通院する必要があります。
移動する場所が遠くない、もしくは、あと数回の通院で治療が完了する状態なのであれば、就職した先から通院することも可能かもしれません。しかし、極端に遠方であったり、まだ多くの回数が必要な状態だったりすると、通院を継続することは困難になるのです。
場合によっては、就職する場所で転院する歯科医院をさがす必要があります。ただし、転院するという方法も、できるだけ避けたいものです。
なぜなら、矯正治療の治療費が新たに発生するからです。そのため、転院することを選択した場合、治療費の総額が大きく跳ね上がってしまうのです。とくに、地方から都市部に就職する際には注意が必要です。なぜなら、都市部の方が、地方に比べて矯正治療の治療費が高額だからです。
転院をできるだけ避けたいもう1つの理由として、「転院先では、以前の治療方針を継続しにくい」ということが挙げられます。それは、矯正治療には複数の方法があり、同じ治療法、同じ治療計画で治療する歯科医院を見つけることは非常に難しいからです。
さらに考慮すべきは、使用している矯正器具、中でも「ブラケット」についてです。ブラケットとは、ワイヤーを用いる本格的な矯正治療を行う際、歯に貼りつける矯正器具のことです。
このブラケットについても、さまざまなタイプがあります。同じブラケットを用いている歯科医院、もしくはそのブラケットを熟知する歯科医院を見つけることが非常に困難だからです。
就職を控える方へのアドバイス
矯正治療の開始時期について
他県に就職することを考えている場合、進学の時期から逆算して、少なくとも2年前には矯正治療を開始することがオススメです。なぜなら、本格的な矯正治療の治療期間が、通常2年から2年半ほどだからです。
そのため、県外への就職を考えている学生の方は、「大学1年生、もしくは2年生のうちに矯正治療を開始すること」「遅くとも、3年生の前期までには、矯正治療を開始しておくこと」がオススメなのです。
3年生の後期、もしくは4年生になって矯正治療を開始する場合、注意が必要です。なぜなら、就職する時点で、矯正治療が完了していない可能性が高いからです。そのため、他県から通院したり、別の歯科医院へ転院したりする必要があるからです。
そのため、わたしのクリニックでは、矯正相談を訪れた大学生には、今の学年と、就職の予定について確認するようにしています。そして、他県に就職する予定があり、それまでの期間が残されていないケースでは、矯正治療を開始せず、就職先が決定してから開始するようにアドバイスしています。
このように、大学生になって矯正治療を開始する際には、今後の進路について十分考慮することが非常に大切です。そして、矯正治療を開始する時期が非常に重要になってくるのです。
新たな治療方法
しかし、最近では、患者さんと相談のうえ、他県へ就職する予定があったとしても、矯正開始するケースがあります。なぜなら、インビザライン®に代表されるマウスピース矯正を用いることができるようになったからです。
マウスピース矯正で治療を行う際、月に1回の割合で通院する必要はありません。3ヶ月に1回程度の通院でも、矯正治療が可能だからです。 3ヶ月に1回の間隔であれば、土日の休みを利用して、治療を継続して行うことができるからです。
また、転院が必要になった際にも、マウスピース矯正は非常に好都合です。治療費が新たにかかるというデメリットはあるものの、これまで行った治療方針をそのまま継続することができるからです。
このように、マウスピース矯正では、治療方法が異なる、もしくは用いる矯正器具が異なるといった心配をする必要がありません。そのため、就職する時期が近くなっているケースでも、マウスピース矯正にて開始するケースがあるのです。
まとめ
他県での就職を考えている大学生は、矯正治療を開始する時期について十分考慮する必要があります。
なぜなら、矯正治療は、通常2年から2年半ほどの治療期間が必要だからです。そのため、就職する時期が近くなって矯正治療を開始しても、卒業の際に治療が完了しない可能性が高いからです。
そのため、これから矯正治療を考えている方は、早めに矯正相談に行くことが大切です。そして、他県への就職希望がある場合は、その事を主治医に伝えたうえで、矯正治療の開始もしくは治療方法について相談するようにしてください。