矯正治療は、通常2〜3年の治療期間が必要です。しかし、矯正相談を訪れる人の中には、様々な事情があり、短期間で治療を完了せざるを得ない患者さんもいます。
たとえば、結婚式や留学を間近に控えている方の矯正治療です。このように治療期間が限られている場合の手段として、いくつかの方法が挙げられます。
中でも、ここでは、通常より短い治療期間で矯正を完了できる「マルチループ矯正」について説明します。
マルチループ矯正とは
マルチループ矯正は、複数の曲げ(または、ループ)を加えたマルチループワイヤーを用いて行う矯正方法のことです。この特殊なワイヤーを用いることで、約1年という短い治療期間で矯正治療を完了することができます。
これは、一般的な矯正治療における治療期間の半分に相当します。なぜ、マルチループ矯正では、このように治療期間を大幅に短縮できるのでしょうか?
そこには、「ワイヤーの特性」「通院頻度」「治療コンセプト」といった3つの特徴があるからなのです。
マルチループ矯正による治療期間の短縮
ワイヤーの特性
マルチループワイヤーには、特殊な曲げがワイヤーの中にたくさん組み込まれています。その曲げが、それぞれバネの役割を果たします。
このバネの効果を利用して、通常より非常に弱いチカラを、持続的に歯に加えることができるようになります。そして、この継続的に作用する弱いチカラは、矯正治療にとって非常に望ましい状態なのです。
このように、歯にとって理想的なチカラを加えることで、歯は通常よりスムーズに動くようになり、治療期間を短縮することができるのです。
通院の頻度
最適なチカラ、つまり非常に弱く継続的に作用するチカラを加えると、歯は活発に動きます。それにともなって、矯正装置の調整間隔についても、通常より短くする必要があります。
私のクリニックでは、マルチループ矯正を行っている患者さんには、2週間毎に通院してもらって調整するようにしています。一般的な矯正の通院間隔が、1ヶ月毎なので、約半分の間隔です。
このように、矯正装置を調整する間隔を頻繁にすることで、全体の治療期間を短くすることができるのです。
治療コンセプト
一般的な矯正治療の方法が、上下の歯を動かすことによって正しい噛み合わせの関係を構築しようとするのに対して、マルチループ矯正は、奥歯の高さや、全体の噛む面を調整することによって下顎の位置を変化させる治療法です。
つまり、下アゴの位置を動かすことで、噛み合わせを確立する方法です。上下のアゴの位置関係ごと変化させる治療法であるため、通常より短い治療期間で治療を完了することが可能になります。
実際に、マルチループ矯正を行った事例
以前、私が運営するクリニックに,出っ歯の治療を希望する女性が矯正相談にきました。ところが、彼女は1年後に結婚式を控えており、それまでに矯正治療を終えたいという強い希望がありました。
そこで、私はマルチループ矯正について、彼女に提案することにしました。なぜなら、マルチループワイヤーを用いて矯正を行えば、1年以内に治療を完了することができると判断したからです。
治療方法について説明すると、彼女はすぐに矯正治療を開始することを決心しました。その後、2週間毎にワイヤーの調整を繰り返すことで、10ヶ月後には予定どおり治療を完了することができました。
キレイな歯並びで結婚式に臨めたことで、彼女はとても喜んでいました。
まとめ
治療期間が限られている場合の矯正には、マルチループワイヤーを用いた治療が効果的です。通常より頻繁に調整を行う必要がありますが、半分の期間で治療を完了することができます。
マルチループ矯正を考えている方は、まずはこの治療が受けられる歯科医院を見つけることが重要です。
そして、マルチループ矯正が受けられる歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにして下さい。